対訳学習(2)

前回の続きです。

以下の明細書をもとに対訳学習を行いました。

(11)【公表番号】特表2017-515828(P2017-515828A)
(43)【公表日】平成29年6月15日(2017.6.15)
(54)【発明の名称】関節リウマチのための治療
(87)【国際公開番号】 WO2015/177097

Phase 1 single ascending intravenous dose study of mavrilimumab in 32 subjects with RA showed an adequate safety and tolerability profile, and initial indications of biologic activity, such as normalization of acute phase reactants and possible reductions in Disease Activity Score 28- joint assessment (DAS28) in patients with moderate disease activity (Burmester et al. Annals of the Rheumatic Diseases 70: 1542-1549 2011).

目次

用語調査

【Phase 1】:第1相試験(Phase 1)は、新しい薬剤の安全性と耐容性を評価するための臨床試験の最初の段階です。この試験では、通常、健康な成人に対して少量の薬剤が投与され、薬剤の薬効、安全性、および副作用が調査されます。第1相試験は、動物実験の結果を人間に当てはめることには限界があるため、人間の体内での薬剤の反応性を調査する重要な段階です。治験薬の安全性について理解する手助けをすることが目的であり、頻繁な臨床検査を受けて報告が求められます。

出典:
https://ciru.dept.showa.gunma-u.ac.jp/general/cr-steps/
https://www.pfizerclinicaltrials.com/ja/pcru-brussels/about/how-clinical-trials-work
https://www.cro-japan.com/clinical_trial/phase_1.htm

【Single ascending intravenous dose study】:第1相単回内服投与試験(Phase 1 single ascending intravenous dose study)は、新しい薬剤の安全性と耐容性を評価するための臨床試験の一形態です。この試験では、健康な被験者に対して単回の内服投与が行われ、薬剤の安全性、耐容性、および血中濃度などが評価されます。通常、この試験はランダム化およびプラセボ対照のもとで行われ、低用量から高用量へと投与量を増やしていくことで、安全性データが収集されます。この試験は、新薬の開発において重要な初期段階であり、臨床開発プロセス全体の安全性評価に貢献します。

イートモでは、”ascending dose”は「漸増投与」とあります。Single ascending intravenous dose studyは、「第1相単回漸増静脈内投与試験」となるのではないか、と考えました。

「単回投与試験」とは、「薬剤を1回(単回)投与した後の、薬物の体内の血中濃度の変化、尿中濃度の変化、尿中排泄率などを観察するために実施する臨床試験。主に、第Ⅰ相試験と、第Ⅱ相臨床試験(探索的臨床試験)で行われる試験方法です。

出典:
治験ナビ用語集 【単回投与試験(SDS)】 (chikennavi.net)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29746725/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31250992/

【Mavrilimumab】:マブリリムマブは、抗リウマチ薬として使用される薬物です。具体的には、抗顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体抗体であり、関節リウマチの治療に使用されます。マブリリムマブは、関節リウマチの患者に投与されることがあり、その安全性と有効性に関する臨床試験が行われています。第1相試験(Phase 1)は、新しい薬剤の安全性と耐容性を評価するための臨床試験の最初の段階であり、マブリリムマブに関連してもこのような試験が行われています。

【Biologic activity】:おそらく”biological activity”のことでないか?生物活性(biological activity)とは、特定の分子エンティティが標的となる生物に特定の生物学的変化をもたらす能力を指します。例えば、薬剤の有益な効果や有害な影響を示すことも含まれます。生物活性は一般にバイオアッセイによって測定され、その活性は通常投与量に依存し、投与量-応答曲線を通じて調査されます。また、生物活性は化合物の有用性を示唆するため、薬理学や医学分野で重要な役割を果たしています。

出典:Biological activities, definition, types and measurements – ScienceDirect

【Acute phase reactants】:急性相反応物質(出典:イートモ)、急性相反応物質(Acute Phase Reactant, APR)とは、生体内の急性炎症に非特異的に血中に増加するタンパク質成分を指します。具体的には、C反応性蛋白(CRP)、フィブリノーゲン、補体などがその例として知られています。これらの物質は急性炎症が発症すると血清中の濃度に著しい変化を示し、炎症の診断や経過観察に役立ちます。

出典:Physiology, Acute Phase Reactants – StatPearls – NCBI Bookshelf (nih.gov)

【Disease Activity Score 28 – joint assessment (DAS28) 】:DAS28(Disease Activity Score 28)とは、関節リウマチの活動性を評価する指標の一つです。DAS28の算出には圧痛関節数、腫脹関節数、患者による全般的評価(VAS)、急性期反応物質(血液検査でわかるCRPまたはESR)が使用されます。DAS28の数値によって疾患活動性が評価され、寛解、低い疾患活動性、中等度の疾患活動性、高い疾患活動性の各段階に分類されます。

出典:DAS28、SDAI、CDAIの算出方法|東京のリウマチ専門医 (yukawa-clinic.jp)

上記の用語調査をもとに、自力翻訳

Phase 1 single ascending intravenous dose study of mavrilimumab in 32 subjects with RA showed an adequate safety and tolerability profile, and initial indications of biologic activity, such as normalization of acute phase reactants and possible reductions in Disease Activity Score 28- joint assessment (DAS28) in patients with moderate disease activity (Burmester et al. Annals of the Rheumatic Diseases 70: 1542-1549 2011).

自力訳:RAを有する32人の被験者を対象とするマブリリムマブの第1相単回漸増静脈内投与試験は、中程度の疾患活動性を有する患者において、十分な安全性及び忍容性プロファイルを示し、急性相反応物質の正常化及び疾患活動性スコア28(DAS28)で低下の可能性のような生物学的活性の初期徴候も示した。

“an adequate safety and tolerability profile, and initial indications of biologic activity, such as normalization of acute phase reactants and possible reductions” の部分を次のように解釈:

an adequate safety and tolerability profile,
and initial indications of biologic activity,
such as normalization of acute phase reactants
and possible reductions in Disease Activity Score 28…

文中にandが頻出し、どういう並列構造なのか判断に迷いましたが、(A and B) and C such as X and Yという並列構造だと解釈しました。

normalization of acute phase reactantsのacute phase reactantsは急性炎症が発症すると血清中の濃度に著しい変化を示すとあるので、それがnormalization、つまり正常値に戻るということだと解釈しました。

「DAS28における考えられる低下」、おそらく、DAS28の数値によって疾患活動性が評価されるので、数値が低下することだと解釈しました。しかし、ここの部分の訳に関しては自信がありませんでした。

AIに自力訳と公開訳を比較させる

Phase 1 single ascending intravenous dose study of mavrilimumab in 32 subjects with RA showed an adequate safety and tolerability profile, and initial indications of biologic activity, such as normalization of acute phase reactants and possible reductions in Disease Activity Score 28- joint assessment (DAS28) in patients with moderate disease activity (Burmester et al. Annals of the Rheumatic Diseases 70: 1542-1549 2011).

自力訳と公開訳を比較し、特許明細書の翻訳文として適切なのはどちらですか?また、2つの訳文において、内容的・文法的に間違っている箇所を挙げ、修正し、その修正の根拠もあわせて提示してください。

自力訳:RAを患う32人の被験者を対象としたマブリリムマブの第1相単回漸増静脈内投与試験は、中程度の疾患活動性がある患者において、適切な安全性および忍容性プロファイルを示し、急性相反応物質の正常化および疾患活動性スコア28(DAS28)で低下の可能性のような生物学的活性の初期徴候も示した( Burmester et al.Annals of the Rheumatic Diseases 70:1542-1549 2011)。

公開訳:RAがある32人の被験者におけるマブリリムマブの第1相単回漸増静脈内投与試験は、適切な安全性および耐容性プロファイルと、中等度の疾患活動性がある患者における、急性期反応物質の正常化、および疾患活動性スコア28関節評価(DAS28)の可能な低下などの生物学的活性の初期徴候とを示した( Burmester et al.Annals of the Rheumatic Diseases 70:1542-1549 2011)。

特許明細書の翻訳文として適切なのは、公開訳です。自力訳には、以下のような内容的・文法的な誤りがあります。

内容的誤り

「RAを患う32人の被験者を対象とした」という部分は、原文の「in 32 subjects with RA」を「RAを患う32人の被験者において」と訳していますが、この場合、被験者たちがRAを患っているという状態が試験の結果に影響を与えていることを示唆することになります。しかし、原文では、被験者たちがRAを患っているかどうかは、試験の結果とは無関係であると解釈できます。したがって、この部分は「RAの患者である32人の被験者を対象とした」と訳すべきです。

「急性相反応物質の正常化および疾患活動性スコア28(DAS28)で低下の可能性」という部分は、原文の「normalization of acute phase reactants and possible reductions in Disease Activity Score 28- joint assessment (DAS28)」を「急性相反応物質の正常化および疾患活動性スコア28(DAS28)で低下の可能性」と訳していますが、この場合、「急性相反応物質の正常化」と「疾患活動性スコア28(DAS28)で低下の可能性」は、同じ被験者で観察された結果であるように解釈できます。しかし、原文では、これらの結果は、それぞれ異なる被験者で観察された結果であると解釈できます。したがって、この部分は「急性相反応物質の正常化(中程度の疾患活動性がある患者において)および疾患活動性スコア28(DAS28)の低下(中程度の疾患活動性がある患者において可能性がある)」と訳すべきです。

文法的な誤り

「中程度の疾患活動性がある」という部分は、原文の「with moderate disease activity」を「中程度の疾患活動性がある患者において」と訳していますが、この場合、「中程度の疾患活動性がある」は、被験者の状態を表す形容詞ではなく、疾患の活動性を表す名詞になります。したがって、この部分は「中程度の疾患活動性がある患者」と訳すべきです。

修正した公開訳は、以下のとおりです。

公開訳

RAの患者である32人の被験者を対象としたマブリリムマブの第1相単回漸増静脈内投与試験は、適切な安全性および耐容性プロファイルと、中等度の疾患活動性がある患者における、急性期反応物質の正常化(中等度の疾患活動性がある患者において)および疾患活動性スコア28関節評価(DAS28)の低下(中等度の疾患活動性がある患者において可能性がある)などの生物学的活性の初期徴候とを示した(Burmester et al. Annals of the Rheumatic Diseases 70: 1542-1549 2011)。

この訳文は、原文の意味を正確に伝えており、特許明細書の翻訳文として適切であると言えます。

並列構造についての疑問

「…showed an adequate safety and tolerability profile, and initial indications of biologic activity, such as normalization of acute phase reactants and possible reductions…」の並列構造を解説してください。

原文の「showed an adequate safety and tolerability profile, and initial indications of biologic activity, such as normalization of acute phase reactants and possible reductions…」は、2つの並列構造から構成されています。

1つ目の並列構造は、「an adequate safety and tolerability profile」と「initial indications of biologic activity」です。これらの2つの要素は、いずれも「showed」の目的語であり、試験の結果を表しています。また、いずれも名詞句であり、同じ文法構造で構成されています。

2つ目の並列構造は、「normalization of acute phase reactants」と「possible reductions…」です。これらの2つの要素は、「such as」で結ばれていることから、同義または類義の関係にあると考えられます。また、いずれも名詞句であり、同じ文法構造で構成されています。

したがって、この並列構造は、以下のとおりに解釈できます。

試験の結果は、適切な安全性および忍容性プロファイルを示し、生物学的活性の初期徴候を示した。これらの初期徴候には、急性相反応物質の正常化および疾患活動性スコア28の低下などが含まれる。

この解釈は、公開訳とも一致しています。

(A and B) and C such as X and Yという並列構造だと私は解釈しました。間違っていますか?

あなたの解釈は、原文の並列構造を正しく理解したものと言えます。

「(A and B) and C such as X and Y」という並列構造は、以下の3つの要素から構成されています。
A and B:主な要素
C:従属要素
X and Y:Cの具体例
この構造では、A and BとCは、同じ文法構造で構成されており、同等の意味を持っています。また、CとX and Yは、同義または類義の関係にあります。
原文の「showed an adequate safety and tolerability profile, and initial indications of biologic activity, such as normalization of acute phase reactants and possible reductions…」では、
A and B:適切な安全性および忍容性プロファイル
C:生物学的活性の初期徴候
X and Y:急性相反応物質の正常化および疾患活動性スコア28の低下
という要素に当てはまります。
したがって、あなたの解釈は、原文の並列構造を正しく理解したものと言えます。

  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次