関節リウマチの免疫機構と治療法について

祖父が関節リウマチを患っていました。大正生まれだった祖父はめったなことで体調が悪いとは言いませんでしたが、関節リウマチの痛みが出るとひどく痛がり、激痛で顔を1日中しかめ、歯を食いしばっていました。この病気は非常に恐ろしいと子どもながらに思ったのを今でも覚えています。

関節リウマチは関節の痛みや腫れ、機能の低下を引き起こすことがあります。関節リウマチの発症メカニズムは、自然免疫および適応免疫の異常により引き起こされる免疫反応が中心にあります。本記事では、関節リウマチの発症メカニズムに関与する医学用語を取り上げ、治療法について解説します。

目次

自然免疫

自然免疫は、外来の病原体や異常細胞に対する即時反応を担う免疫システムの一部です。関節リウマチにおいては、炎症の原因となるリウマチ因子や抗CCP抗体の産生が自然免疫系により誘導されることが知られています。

抗CCP抗体(抗シクリックシトルリン化ペプチド抗体)

抗CCP抗体(抗シクリックシトルリン化ペプチド抗体)は、関節リウマチの診断や予後評価に用いられる自己抗体です。シトルリンというアミノ酸に対する免疫反応によって生成される抗体で、関節リウマチ患者の血液中に高頻度で検出されます。

関節リウマチでは、遺伝的要因や環境要因が絡み合って、自己抗体が生成されることが一般的です。抗CCP抗体は、特に関節リウマチの特異性が高く、診断の補助手段として広く用いられています。抗CCP抗体陽性の患者は、関節破壊の進行が早いことが報告されており、抗CCP抗体の検査結果は、疾患の予後評価や治療戦略の選択に役立ちます。

自己抗体

自己抗体は、通常は体外の異物や病原体に対して反応する免疫システムの抗体が、誤って自分自身の細胞や組織に対して反応してしまう抗体のことを指します。自己免疫疾患(例:関節リウマチ、システム性エリテマトーデス、多発性硬化症など)では、自己抗体の産生が関与し、病態が引き起こされます。

抗原提示細胞

抗原提示細胞は、血球のひとつで、体内に侵入してきた細菌やウイルス感染細胞などの断片を抗原として自己の細胞表面上に提示し、T細胞を活性化する細胞。抗原提示細胞は細胞表面上に主要組織適合抗原分子(MHC分子)を持ち、これに抗原を載せて提示を行う。T細胞はMHC分子上に提示された抗原を認識して活性化し、引き続いて免疫反応をおこす。主に皮膚、脾臓、リンパ節、胸腺に存在します。

T細胞

T細胞は、適応免疫に関与するリンパ球の一種で、抗原提示細胞から情報を受け取り、B細胞やマクロファージなど他の免疫細胞の活性化に関与します。関節リウマチにおいては、T細胞が活性化し、関節炎症の継続に寄与することが示唆されています。

B細胞

B細胞は、抗体を産生するリンパ球です。関節リウマチの患者では、特異的な抗体であるリウマチ因子や抗CCP抗体がB細胞から産生され、炎症の継続と関節破壊を引き起こします。

マクロファージ

マクロファージは、細菌やウイルス、異物を食作用で捕食する免疫細胞です。関節リウマチでは、関節内でマクロファージが活性化し、炎症性サイトカイン(例:IL-6)を産生することで関節炎症が維持されます。

関節炎症

関節炎症は、免疫システムの反応の一種で、組織の損傷や感染に対する防御メカニズムです。関節リウマチでは、炎症が持続し、関節の腫れや痛み、機能障害を引き起こします。

リンパ

リンパは、リンパ管を通って体を巡る液体で、免疫システムに重要な役割を果たします。関節リウマチでは、リンパ球やマクロファージなどの免疫細胞が関節炎症部位に集まり、病態を維持します。

メトトレキサート

メトトレキサートは、関節リウマチの治療薬として広く使用されている抗代謝薬です。抗炎症作用および免疫抑制作用を持ち、関節炎症の抑制や関節破壊の進行の遅延に効果があります。

IL-6

IL-6 インターロイキン-6(IL-6)は、炎症性サイトカインの一種で、関節リウマチの病態に関与します。マクロファージから産生されるIL-6は、関節炎症の維持や関節破壊の進行に寄与することが示唆されています。

サイトカインとは主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質で、標的細胞表面に存在する特異的受容体を介して極めて微量で生理作用を示し、細胞間の情報伝達を担う。ホルモンとの明確な区別はないが、一般的にホルモンのように特定の分泌臓器から産生されるわけではなく、比較的局所で作用することが多い。サイトカインという名称が使用される以前は、抗原が感作リンパ球に接触した際にこのリンパ球から分泌される特殊なタンパク質の総称を特にリンフォカインと呼び、単球やマクロファージが産生するリンパ球の増殖に関わるタンパク質をモノカインと呼んだ。しかしながらその後、リンパ球や単球ともに作られるようなタンパク質の発見等を経て、産生細胞による区別が難しいことからこれらの生理活性物質の総称として、サイトカインを用いるようになった。サイトカインは種々の細胞により産生され、一つの分子でそれぞれの標的細胞において多様な生理作用を示すが、その作用は異なるサイトカイン同士で重複することも多い。また、サイトカイン同士は複雑なネットワークを形成し、協調や拮抗など相互に作用し合うことで免疫系全体を制御している。特に一つのサイトカインが産生されるとそれに呼応して次々に他のサイトカインが誘導されてくる現象をサイトカインカスケードと呼び、炎症応答等に関与することが知られている。サイトカインには多くの種類があり、特に免疫・炎症反応等の生体防御に関連したものが多くみられるが、細胞増殖や分化、細胞死や治癒等に関連するものもある。代表的なもので、インターフェロン(IFN)、インターロイキン(IL)、ケモカイン(CCLなど)、コロニー刺激因子(顆粒球コロニー刺激因子:G-CSF、エリスロポエチンなど)、腫瘍壊死因子(TNF)、増殖因子(EGF、FGF、TGF-βなど)などが挙げられる。中でもTNF-αやIL-6等の生体内の様々な炎症症状を引き起こすサイトカインを炎症性サイトカインと呼び、一方でIL-10やTGF-βのような炎症症状を抑制する働きを有するサイトカインを抗炎症性サイトカインと呼ぶ。 

引用元:公益財団法人腸内細菌学会

まとめ

関節リウマチの治療法は、病態を把握することにより進歩を遂げています。現代の治療法では、メトトレキサートを中心とした従来の治療薬に加え、IL-6やT細胞、B細胞など免疫反応に対する生物学的製剤が開発されています。これらの治療法は、炎症の継続や関節破壊の進行を抑制し、患者の生活の質を向上させることが期待されています。 

生物学的製剤とは、バイオテクノロジー(遺伝子組換え技術や細胞培養技術)を用いて製造された薬剤で、特定の分子を標的とした治療のために使われます。 生物学的製剤は高分子の蛋白質であり、内服すると消化されてしまうため、点滴あるいは皮下注射で投与します。 バイオあるいはバイオ製剤とも呼ばれます。

引用元:一般社団法人日本リウマチ学会

生物学的製剤は、IL-6受容体拮抗薬やTNFα阻害薬、T細胞の共刺激阻害薬、B細胞を標的とした薬剤など、免疫応答に特異的に作用する薬剤です。これらの治療法は、従来の治療に応答しない患者に対して効果的であることが報告されており、関節リウマチ治療の新たな選択肢となっています。

最近の研究では、免疫細胞の相互作用や炎症性サイトカインの役割がさらに明らかになりつつあり、より効果的で副作用の少ない治療法の開発が進められています。

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